Y!mobileは、2023年8月22日に新料金プラン「シンプル2」を発表、併せて同年10月以降に提供を開始することをアナウンスしました。
第一印象から言ってしまうと『なんだ、またセットで安く見せる手法にかよ』です。少し前にドコモがリリースした「irumo・eximo」と同じような古くさ~い手法だと感じます。ユーザーには安くなったように見せられる一方、自分たちはさほど身を切ることもないので正直安易な手法で、世間的にも概ね体のいい「値上げ」と受け取られているようです。
とはいえ、しっかり中身をチェックしないことには「損なのか得なのか」「誰に向く向かない」も分からないので、そこは私情抜きで検証してみようと思います。
今回はこのY!mobileの新料金プラン「シンプル2」の内容の確認と、旧プランよりも負担が増えた料金と、旧プランよりも増加した高速通信容量が果たしてお得なのか、あるいは損なのかを検証します。
今回も筆者が独断で(偏見はないように)深堀りします。
※本稿に記載されている価格・料金は特に注釈のない限り「税込」表示です。
シンプル2は料金アップで容量もアップ
まず、何も割引を点けない裸のプランを比べてみます。
旧プラン | 新プラン | 変更 | |
S | 3GB 2,178円 726円/1GB | 4GB 2,365円 591円/1GB | +1GB +187円 -135円/1GB |
M | 15GB 3,278円 218円/1GB | 20GB 4,015円 200円/1GB | +5GB +737円 -18円/1GB |
L | 25GB 4,158円 166円/1GB | 30GB 5,115円 170円/1GB | +5GB +957円 +4円/1GB |
これを見ると一目瞭然ですが、S/M/Lいずれも「容量増量」と「料金アップ」となっています。
少し詳しく見るために、各マスの下段には「1GBあたりの単価」を記載しています。これを見ると「S」「M」では、僅かながら1GBあたり単価が安くなっていますが、「L」では、わずか4円ながら逆に割高になっていることがわかります。
「L」に関しては、容量増量が「M」と同じ5GBであるのに、料金は「M」より220円多く値上げとなっています。初見ですが「L」はコスパが悪い印象ですね。
3GBが妥当なのか、4GB必要なのか
容量アップ+料金値上げが「損」なのか、「得」なのかは人によって違います。
これまでS:3GBで足りなかった人は、187円のアップで1GB買ったのと同じなので「お得だ」と感じるはずですが、逆に毎月容量を余らせている人は、無駄に1GB増えて料金もアップで「なんだ全然損じゃないか」と感じるのではないでしょうか。
それは「M」プランでも同じで、新プランでは737円で5GB買うのと同じなので、5GB/737円はかなりのバーゲンプライスと言えます。もちろん「L」でも同様で、5GB/957円は十分に高コスパです。
逆に従来の現行プランで容量を余らせている人にとっては、それこそ「余計なお世話」であって、必要のない容量を勝手に増やしておいて料金を上げるなんて、結構理不尽さを感じるかもしれませんね。
毎月容量を余らせている人は、3GB/20GBで割安に使える他社サービスへの乗換えを検討した方がいいかもしれません。
繰越しできるので余っても大丈夫なのでは?
と思うかもしれませんが、毎月容量が余るということは翌月に繰り越しても使い切らずに捨てる(消滅)だけになってしまうのは目に見えています。『いつもは足りないのに今月は余った』という人であれば繰り越すことで余った分も翌月分も使い切れますが、毎月余らせる人にとって繰越しは無意味です。
Y!mobileは妙に「繰越しできる」ことをアピールするのですが、実はこれ、少し前までY!mobileは繰越しができなくて、他社(特に同じサブブランドのUQmobile)と比較されて「繰越できない」ことをずいぶんデメリットとして突っ込まれたんです。その反動なのか、繰越しできるようになった今はやたら「繰越せる」ことをアピールするんですが、ずっと昔から繰り越せる他社では当たり前のことで、Y!mobileだけがやたらに「繰越せる」「繰越せる」と言っている印象です。
ただし、新プランには色々な割引制度が用意されているので、無理のない範囲で割引を付けられるのであれば、お得になる可能性はあります。次項では「割引」について見てみます。
シンプル2を割安にする割引制度
もともとY!mobileは色々なセットで料金を値引くのがお家芸みたいなところがあって、現行プランでもそれは同じですが、新プラン「シンプル2」ではまた新たな割引制度が用意されています。
「おうち割光セット(A)」の割引額を拡大
現行プランでも「おうち割光セット(A)]は提供されていますが、新プランでは「M」「L」プラントのセットでの割引額を拡大します。現行1,188円→1,650円となります。
「おうち割家族割引」は割引額そのままで継続
家族回線(2回線目以降)は、1回線につき1,100円が割り引かれます。
PayPayカード割を新設
料金をPayPayカードで決済すると充当される割引が新設され187円の割引となります。
「じゃあPayPayカードを作ろう」と思われるかもしれませんが、月間187円とあまり大きな金額ではないので、現状お持ちでない方は無理に作る必要性は大きくないと思います。もちろん、すでに発行済みの方は決済方法にした方がお得です。
データ使用量が月間1GB以下の場合の自動割引
「M」「L」プラン限定ですが、月間の高速データ利用量が1GB以下だった場合には、「M:1,100円」「L:2,200円」が自動的に割り引かれます。
割引をすべて適用すると料金はいくらになる?
これらの割引をすべて適用した場合の料金額は以下の通りです。
S | M | L | |
容量 | 4GB | 20GB | 30GB |
基本料金 | 2,365円 | 4,015円 | 5,115円 |
おうち割① | -1,100円 | -1,650円 | -1,650円 |
おうち割② | -1,100円 | -1,100円 | -1,100円 |
PayPayカード | -187円 | -187円 | -187円 |
適用後A | 1,078円 | 2,178円 (2,728円) | 3,278円 (3,828円) |
月間1GB以下 | – | -1,100円 | -2,200円 |
適用後B | 1,078円 | 1,078円 (1,628円) | 1,078円 (1,628円) |
「おうち割①」は光セット、「おうち割②」は家族割引2回線目以降を適用の場合です。また、「おうち割①」「おうち割②」はいずれか一方のみ選択可能です。
「M」「L」の( )内は、「おうち割②」(家族割引2回線目以降)を選択した場合の金額です。
「M」「L」プランを契約していて、月間データ利用量が1GB以下は考えにくいので何かの事情でほとんどスマホを使えなかった場合の保険と考えるべきでしょう。意地悪く考えれば、「M」「L」で1,078円ですと言いたいための「可能性の話し」でしかないと言えそうです。
そうなると現実的なのは「適合後A」ですね。
自宅のインターネットをソフトバンクでセットにすれば『M:2,178円・L:3,278円』になり、これは『絶対意識してるな…』のまさかの楽天モバイルの料金と同額です。容量もぴったり同じです(楽天Mは20GBの上は無制限になりますが)。
では、Y!mobileと楽天モバイル、どちらが2,178円/3,278円の価値があるか…というと、auローミングしても通信の接続や速度に四苦八苦している楽天モバイル(※)よりは、Softbank通信網フル活用で余裕のY!mobileでは勝負にならない感じです。
もちろん、「Softbank回線が圏外なんだ」なんて特殊事情は除いてですが。
※ただそれも楽天モバイルにプラチナバンドの割り当てが実施されたらどうなるかはわかりません。ドコモ・au・Softbankと同等の帯域を割り当てて貰えるわけではないので不利であることは相変わらずですが、それでも自社通信網に繋がりやすく、ビルや障害物の陰に回り込みやすいプラチナバンドが組み込めるのは大きいんじゃないかと思います。そうなるとユーザー数が少ない楽天の方が「速い」なんてことに…なりませんかね?
シェアプランセット割
シェアプランは、データ容量を子回線と分け合えるサービスです。親回線に付帯する高速データ通信を子回線が利用できる仕組みで、音声通話の利用はできません。
本来1,078円/月の「シェアプラン」が、「シンプル2 S/M/L」とセットすることで539円/月で利用できる「シェアプランセット割」を利用できます。
例えば、子供にスマホを持たせる際などに、通話はLINEのみとすることで、メールや他のSNSなどデータ通信を利用するサービスを利用させることが可能ですし、タブレットやスマホサブ機などでデータ通信のみに使用する場合にも割安にデータ容量を充てがうことができます。
誰とでも定額が進化
直接「シンプル2」とは関係ないですが、同時に発表されているのでついでに「だれとでも定額+」「スーパーだれとでも定額+」についても見ておきましょう。
通話料の割引内容には変更はなく、「だれとでも…」は10分間のかけ放題で、「スーパーだれとでも~」は10分を超えてもすべての通話が定額になります。
今回の「+」では、従来は別途有料サービスだった「留守番電話プラス・割込電話・グループ通話・一定額ストップサービス」を込みで、880円/1,980円の料金になったのが変更点です。
まあお得といえばお得ですが、セットに組み込まれない状況での利用率ってそんなに大きなものではないと想像できるので、これも「こりゃあすげ~」というような実質値下げとは言い難いと思います。
二段階通信制限を導入 128kbpsに制限
あまりよろしくない事はあまり大々的には喧伝しないのは世の常ですが、ちょっと大きめな問題なのであえて見出しを作ってお知らせしておきます。
『二段階通信制限』の導入です。
二段階通信制限というのは、従来は高速データ容量を使い切ると、「S」は300kbps、「M」「L」は1Mbpsに速度制限を受けましたが、低速で利用できる容量に制限はありませんでした。いわゆる「3日間制限」もなく、1Mbpsで使い続けられるのは逆にメリットでさえあったんですが…。
ここへきて「シンプル2」導入に合わせて、「二段階通信制限」が導入され、規定を超えて低速通信を利用すると128kbpsまでさらなる速度制限を受けることになります。
第1段階 | 第2段階 | |
S | 4~6GB 300kbps | 6GB超 128kbps |
M | 20~30GB 1Mbps | 30GB超 128kbps |
L | 30~45GB 1Mbps | 45GB超 128kbps |
表の「4~6GB」が従来の低速制限にあたり上限が6GBまでと定められ、6GBを超えるとプラン無関係に128kbpsに二段階に引き下げられます。
これは「改悪」と言えるでしょうね。Sの300kbpsもMVNOの低速より100kbps速い上、実際の速度も上限いっぱいまで出る(MVNOでは低速さえ速度低下する場合がある)ので使い勝手は悪くないですし、「M」「L」の1Mbpsは普通に使えますからね。
実は1Mbpsという速度は、少し前まではMVNOの通信速度が実用的に使えるかどうかの「下限目安(1Mbps出ていればまあまあ使える的な感じ)」とされていた速度で、そりゃあ動画だ、オンラインゲームだ…は無理にしても、WEB閲覧や、まして軽量なメールやSNSなどはサクサク快適とはいかないまでも充分実用範囲の速度と言えるんです。
それが、すべてのプランで128kbpsに再制限をうけることになるわけです。
余談ですが、ちなみに128kbpsがどんな速度か知りたければ「Povo2.0」を高速通信の有料トッピングを購入しないで利用して見ると分かります。トッピング購入しない場合のPovoの通信速度は常に128kbpsなので。初期費用もかからないし、月固定基本料もないので、128kbpsを試してみるにはいい機会かと。
結論「シンプル2」は得なのか損なのか
やはり人による…としか言えません。具体的には以下の通りです。
容量増がメリットにならない人は乗り換え検討
毎月データを余らせている方にとっては、他社乗り換えを考えてもいいぐらいの無駄な「(容量)アップ+(料金)アップ=改悪」だと言えます。2~3GBを割安に使える他サービスへ乗り換えるべきでしょう。おそらく、自社内に「LINEMO」を持っていることでの容量+料金アップなのではないか…と思います。
容量増がメリットになるなら継続利用がおすすめ
逆にデータ量が毎月足りなくて「あと1GB欲しい」「あと5GB欲しい」という方にはめちゃくちゃお得と言えるでしょう。なんせ「1GB=550円」が相場の中、1GB=187円、5GB=737円/957円はかなり高コスパですから。
そういう方は迷わず継続で、新プランに切り替えるのが正解だと思います。現在他社を利用している方も、自宅インターネットか、家族複数で契約できるならかなり好条件の乗換えではないかと思います。
あと2GB欲しい場合はどうする?
つまり月間5GB使いたいということですね。
実はこれにはいい手があるんです。まずY!mobileを継続(あるいはMNP転入)しておいて「シンプル2」プランに切り替えることで4GBは確保できます。
その上のさらに1GBは「Povo2.0」をおすすめします。
Povo2.0は有料トッピングを購入しない限り基本料金が発生しないので、予備回線としては抜群の資質をもっているんです。何もY!mobileとだけでなく他社のどんな料金プランと組み合わせても、ギガが足りなくなる時まで無料で回線を維持していて、必要な時に「1GB/7日間=390円」を購入すれば、ランニングコストがかからず「もう1GB」が手に入るわけです。
しかも普段のお買い物でもギガが貰える「ギガ活」はなかなか面白い試みですし、Softbank回線とau回線の2本立ては、『通信安全保障』の観点からも2系統の通信を確保しておくことには大きな意味があります(以前発生したauの通信障害の轍を踏まないように)。
インターネットや複数回線とセット契約可能ならMNP転入もあり
逆に、いまは他社サービスを利用しているが、自宅インターネットまたは複数回線契約が可能で、増量になったデータ容量に魅力を感じるなら、Y!mobileに乗換えてもいいと思います。
やはりキャリア品質の通話・通信はMVNOとは一線を画しますし、昼12時台をはじめ混雑時間帯でも速度低下しないのは大きな魅力です。その上で、料金と容量の兼ね合いで損しないならY!mobileというチョイスは十分ありかと思います。
そんな訳で、今回はY!mobileが発表した新料金プラン「シンプル2」をチェックしました。
プラン内容をチェック、割引制度や通話定額のリニューアルもチェックしました。その上で、「シンプル2」がどんな人に得なのか、損なのかも検討してみました。
結論は当たり前ですが「人による」ですね^^;
世間的には「実質値上げだ」という風潮が強めですが、モバイル通信の料金プランはそんなに画一的に良し悪しを断定できるものではありません。なにせ使っている側の都合や要望が千差万別なのですから、向いている人もいる、向かない人もいるとしか言えないはずです。
本稿を読んで「なるほど自分には向いている」と思った方は、継続や他社からの乗換えを検討してよいでしょうし、「向いていない」と思った方は他社サービスへの転出という選択肢も含めて検討してみてください。
それで今日はこの辺で。