MNP制度を利用してモバイル通信サービスを乗り換える際に、転出元でのMNP予約番号取得が不要な「ワンストップ」方式が開始になってはや1か月以上が経過しました。
まず転出元で「MNP予約番号」を取得して、転入先へ申し込むのはちょっと手間ですし、引き留めや。あーだこーだと注意書きがあったりして面倒くさいったらありません。今回はそんな手間を不要にする「ワンストップ方式」について、MMD研究所が公開した調査結果を参考に考えてみようと思います。
※本稿は、MMD研究所が実施した調査結果を引用・参考にしています。
→ https://mmdlabo.jp/investigation/detail_2220.html
MNPワンストップ方式ってなんだっけ?
話は「MNPワンストップ方式」って何だっけ?というところから始めますが、「十分わかってる」「説明不要」と言う方は次項へ飛んでください。
ワンストップとは「1つで事足りること」です。用事が1か所ですべて済んでしまうこと、手続きが1回で済んでしまうこと、ワンアクションで結果が出ることなどを「ワンストップ」というわけですが、MNPにおけるワンストップとは通信サービスの乗り換えが1か所での手続きで完了することを指します。
従来は、転出元でMNP予約番号を取得し、それを持って新しい転入先へいって手続きをする必要があったので、行ってみれば「ツーストップ」だったわけです。
それが新制度では、転出元でのMNP予約番号の発行などの手続きは不要で、最初から転入先に使用中の電話番号で申し込むことでMNPによる乗り換えが完了し、これを「ワンストップ方式」というわけです。
たしかに単純に考えて手間は1か所で済むので、簡単になりますね。いいことだと思います。
もう1つあるとすれば、MNP乗り換えに手数料がかからなくなることが大きなメリットでしょう。
ワンストップ方式に参加している数少ないMVNO(自社回線を持たないいわゆる格安SIM)である「日本通信」は、今年4月1日以降のMNP予約番号の発行などの転出手続きに手数料が0円に変更され、他のワンストップ方式採用の通信サービスに乗換える際に「乗り換え手数料」がかからなくなっています。mineoも同様にMNP転出手数料無料となっています。
ちなみに、2023年7月14日現在でワンストップ方式に参画しているのは以下の通信サービスです。
NTTドコモ | docomo・ahamo |
KDDI | au・UQmobile・Povo |
ソフトバンク | Softbank・Y!mobile・LINEMO・LINEモバイル(※) |
楽天モバイル | 楽天モバイル(MNO)・楽天モバイル(MVNO) |
MVNO | 日本通信(日本通信SIM/b-mobile)・mineo・ジャパネットたかたモバイル |
手数料が欲しいMVNOの参画数はまだまだ…ですね。
MNP以前は電話番号は使い捨てだった
今では「MNP」=電話番号を乗り換え先でも継続して利用することは当たり前ですが、ほんの17年前までは、携帯電話の電話番号は使い捨てでした(初代iPhoneの登場が2007年なので当時は携帯電話が主流でした)。
「使い捨て」というのは、通信会社を乗り換える際には電話番号は継続利用できず、乗り換え先で必ず新しい別番号が付与される仕組みでした。2006年にやっと「MNP=Mobile Number Portability(番号持運び制度)」が運用され、通信会社を跨いで電話番号を継続利用できるようになりました。
実はこの「通信会社を変わると電話番号も変わってしまう」と言う仕組みは、家族・知人友人・取引先に周知するのが手間で面倒なことから、ある意味、通信会社からすれば「乗換えさせない防衛壁」になっていました。
昔は、通信キャリアは自社契約者を他社に乗換えさせないため、「2年縛り」も含め、ありとあらゆる手段を講じて乗り換えを邪魔していました。電話番号が変わってしまうことも、ユーザーにしてみればその手間の面倒くささを考えれば、「同じ通信会社を使っておくか」となっていたわけです。
電話番号の継続利用が可能になって以降もキャリアの必死の抵抗として、転出元と転入先の両方での手続きを必要だったり転出手数料がかかるなど、何とか自社契約者を囲い込もうと手続きを煩雑で面倒くさくしていました。
それでもユーザー側は、手間がかかろうが多少の手数料がかかろうが、電話番号を継続できるなら…と利用者がどんどん増えていって現在に至りますが、17年経ってついに手続きの簡略化に至ったというわけです。
MNP導入当時はドコモ・KDDI・Softbankの通信キャリア3社が「抵抗勢力」でしたが、17年後の今は、キャリアはワンストップ制度導入前からMNP手数料や初期手数料を廃止しており、逆に「手数料収入が少しでも欲しい」MVNOが抵抗勢力になりつつあるのは面白い逆転現象です。
MNPワンストップの認知度は13.9%
MMD研究所による「18歳~69歳の男女25,000人を対象に」実施された調査によれば、ワンストップ方式のMNPが始まったことを知っていた」と回答したのは全体の13.9%だったそうです。
この13.9%=25,000人のうち3,475人しかワンストップ方式を知らないというのは、多いのか、少ないのか微妙なところですが、それよりも驚いたのが、「MNP自体を知らなかった」という回答が46.2%もあったことです。
『電話番号を継続して他社サービスに乗換えることができる』ことを知らない方が全体の半分近くもいる…ということで、ちょっとこれには驚きました。
シニア層も調査対象に入っているから…と思われるかもしれませんが、実は今のシニア層はそこまでデジタルに弱い世代ではありません。1994年当時、それまでレンタルオンリーだった携帯電話が買取り可能になった頃の30~40代の働き盛り世代は、まだ高価だった携帯購入の中心層でしたが、その世代がまさに今60~70代だからです。
それからごく普通に通信サービスを使い、端末を機種交換しながら時を経ていれば、筆者自身も含めて年齢的要因で「十把一絡げ」でネットやデジタル、ガジェットに弱いということは最早ありません。個人差で苦手だという人は一定数いるはずですが、年代全体として「デジタルに弱い」世代ということはないんです。
そういう観点で見ると、この『電話番号を継続して他社サービスに乗換えることができる』ことを知らない方が全体の半分近くもいる…という調査結果は不思議な感じがします。
MNPへの不満が解消される?
『従来のMNP方式での乗り換え時の不満』についても調査しています。それによれば画像のような不満を感じる方が多かったようですが、
- MNP予約番号の発行が面倒だった(48.7%)
- 転出手数料、契約事務手数料などがかかった(39.2%)
- 解約する通信会社の引きとめ質問が面倒だった(25.9%)
この3点に関してはワンストップ方式導入で解消できる不満でしょう。
「転出手数料、契約事務手数料」については、すでにMVNOでも、日本通信やmineoではMNP転出手数料を無料にしていますが、「契約事務手数料」についてはMVNO系は3300円が必要です。
ただ、キャリア系の格安サービス「ahamo」「Povo」「LINEMO」は契約事務手数料がありませんので、ユーザー獲得競争の面から見てもいずれこれも無料化に進むように思います。誰だって他社でかからない費用を取られたくはないので、契約事務手数料を取るサービスは避けられてしまう傾向になるのは自然な流れと言えるんじゃないか…と思います。
「まさか」の、キャリア系が事務手数料を設定…なんて方向に逆行しないといいのですけれど…
MVNOは非常に利幅の薄い業態です。キャリアから借りている回線には当然「賃料」が発生しますし、ユーザーへのプラン料金は過当競争ですから。仕入れ値は高く売値は安いというわけです。なのでどうしても手数料収入が欲しいところなので、なかなか積極的にはワンストップ方式に参加できな事情もあるのかもしれません。ワンストップ方式への参加は弱小のMVNOには死活問題なのかもしれません。
乗り換え先として検討している通信サービス上位は?
乗り換えを検討している通信サービス上位10傑は以下の通りです。
- 楽天モバイル(33.7%)
- ahamo(30.1%)
- UQmobile(24.4%)
- Y!mobile(23.1%)
- povo(19.1%)
- LINEMO(12.5%)
- docomo(9.4%)
- Softbank(8.7%)
- OCNモバイルONE(8.5%)
- au(7.6%)
1位【楽天モバイル】には多くの方が期待しているのですね。確かにあの料金で「通信も良い」となれば無敵な気がしますし、楽天経済圏の住人であればメリットは小さくないですから頷ける結果でしょう。最大3,278円で高速データ通信使い放題と、音質は通常回線に及びませんが、アプリによる通話無料かけ放題は楽天モバイルの最大の魅力です。プラチナバンドの割り当てなど明るい材料もあるので、今後の展開にも期待が持てそうです。
2位【ahamo】は大容量を割安に使いたい方の支持でしょうか。docomoの安心感もあるかもしれませんね。あとは、docomoにはUQmobileやY!mobileに該当する「サブブランド」がないので、docomo本体以外はahamoに集中した可能性はありそうです(調査時点では「irumo」「eximo」はリリース前)。
3位【UQmobile】はau回線の中で筆頭の支持を得ました。やはり多くの方が「通信品質の良さ・速さ」のイメージを持たれているブランドということでしょうか。これはまだUQmobileがMVNO時代から培ってきたものの成果ではないかと思います。Povoに比べれば少し割高ですが、キャリア本体からの乗換えであれば充分に割安感があって通信も良い…高コスパなサービスと言えます。
ここまでがTOP3でした。
4位【Y!mobile】はSoftbank回線の筆頭でした。3位のUQmobileとの差は1.3ポイントと僅差でユーザー支持にはあまり差がないと言えます。サービス内容もUQmobileと競合するもので、最後は、CMキャラクターの好みと、au回線とSoftbank回線の違い…といったところでしょうか。Y!mobileの強みは店舗数の多さですが、まだ店頭での取り扱いのないワンストップでは現時点では加点にはなっていません。店舗取扱いが始まれば順位にも影響があるかもしれません。
5位【Povo2.0】はauが提供する格安プランです。MVNOのサービスと勘違いされ通信品質や通信速度などの評価が不当に低い気がしますが、月額無料(最大180日まで)で回線維持でき、ギガ活でギガを貰えるスタイルは他サービスにはないPovoだけの魅力です。
実際、筆者も1年近く継続利用していますが、180日ごとの「利用停止予告」で購入した2つの有料トッピング以外に料金は発生していません。他社サービスの併用もありません。そういった通信料をとことん抑えたい…というahamoと真逆のユーザーの要望を集めたのかもしれません。
※紹介コード:『KZUV68TM』入力で「24時間使い放題」トッピングが漏れなくもらえます
6位【LINEMO】はSoftbankが提供する格安プランでSoftbank回線を使用した高品質・高速通信が利用可能です。Povoと同様にMVNOサービスと間違われている可能性がありますがレッキとしたキャリアサービスです。
LINEMOの特徴は何と言ってもLINE利用時の通信料が無料(データ容量を消費しない)である点です。LINEのヘビーユーザーには最適のプランと言えます。また「開通翌月から8か月間基本料無料」や、「5分かけ放題7か月無料」「データ容量2倍」など、加入時特典が多彩でお得な点も見逃せません。
自分としては、PovoとLINEMOの順位はもう少し上かな…という印象ですが、「MNP自体を知らない」方が半数近くを占める調査対象による結果なので、PovoやLINEMOの存在やキャリア提供のサービスであることをご存じない可能性もありそうです。
ワンストップ方式を使って…の調査 まとめ
ただ1つ注意したいのは、この調査の前提が「ワンストップ方式を使って乗換えたい通信サービス」だということです。つまり、乗り換えの方法を問わず、どこに乗換えたいか…の調査ではないということ。
つまり、乗換えたい先は10数サービスに限定されていることは念頭に結果を見なければなりません。
でも逆に、ワンストップが利用できず、MNP転出にも転入にも料金がかかる現在不参加の通信サービスをあえて選ぶか…と考えると、やはりこのTOP10が、ワンストップ抜きにしてもユーザーの乗り換え先TOP10なのかもしれないと思う次第です。
興味深い調査結果でした。
それでは今日はこの辺で。