近年、モバイルバッテリーを取り巻く環境は大きく変化しています。
航空機内への持ち込み制限の強化や、発熱・発火リスクへの注意喚起が進み、「安くて高コスパであればどれでもいい」という時代は終わりつつあります。
その中で注目されているのが、発火リスクの低減を狙った半固体電池(準固体電池)モバイルバッテリーです(当ブログでは、以降「半固体電池」と呼称を統一します)。
「半固体電池」は、従来のリチウムイオン電池とは異なり、電解質構造を見直すことで熱安定性を高め、安全性と耐久性の両立を目指しています。
また、少し前までは半固体電池は比較的大型で価格も高い製品が中心でしたが、近年は技術の進化によりコンパクト化と低価格化が進み、一般ユーザーにも手が届く存在になりつつあります。
本記事では、いずれも半固体電池を採用しモバイルバッテリーの安全性向上を目指すCIOとHAMAKEN WORKSの製品について、設計思想や性能・安全性・発熱・充電速度・携帯性の観点から比較してみました。
モバイルバッテリーの安全性重視が当たり前になった背景

スマホやモバイルバッテリーなどに広く採用されている「(三元系)リチウムイオン電池」は、高いエネルギー密度を持っていることで、小さくても高いエネルギーを供給できます。
反面、衝撃や破損などによって発火・発煙・爆発しやすい弱点も併せ持っています。

東京消防庁の統計によれば、令和5年度には東京消防庁管内だけで年間44件ものモバイルバッテリーを原因とした火災が発生している現実があります(東京消防庁公式データ)。
こうしたことを踏まえ、近年、モバイルバッテリーに求められる基準は大きく変化しています。
特に航空機内への持ち込み制限の強化や、発熱・発火リスクへの注意喚起の広がりにより、「価格や容量だけで選ぶ時代」は終わりつつある…と言えます。
従来は、容量の大きさや価格の安さ(高コスパ)が選定基準の中心でしたが、現在では安全性や熱安定性といった「内部構造の信頼性」が重視されるようになっています。
こうした背景の中で注目されているのが、電解質構造を見直した半固体電池(準固体電池)モバイルバッテリーです。従来のリチウムイオン電池に比べて発熱リスクの低減が期待されており、新しい選択肢として注目されています。

実は、リチウムイオン電池には発火・爆発以外にも弱点があります。それはコストや資源関連の問題です。リチウムイオン電池は「ニッケル」「マンガン」「コバルト」といったレアアースを使用しており、製造コストが割高になり、レアアースの調達コストも決して割安ではないため、もっと安価な金属を使用し、なおかつ発火爆発しにくく、長寿命な「リン酸鉄リチウム電池」などへのシフトが進んでいます。さらに安全性を高める電解質の固体化・半固体化が進んでいます。
半固体電池とは何か|従来の三元系リチウムイオンとの違い

半固体電池(準固体電池)は、従来の液体電解質をベースとしたリチウムイオン電池とは異なり、電解質の一部をゲル状・固体寄りにした構造を持つバッテリーです。
この構造変更により、内部ショートや熱暴走のリスクを抑えやすくなり、熱安定性の向上が期待されています。
一方で、完全に別技術というよりは「リチウムイオン電池の改良型」に近く、エネルギー密度や充電特性などは製品設計によって差が出ます。
そのため、半固体電池=絶対安全というよりも、「安全性を高めるための設計アプローチの一つ」と捉えるのが現実的です。

従来のリチウムイオン電池は可燃性の液体電解質を使用していますが、半固体電池はその大部分をゲル状・固体状の電解質に置き換えています。これにより内部ショートなどの異常が発生した場合でも熱暴走が起こりにくく、発火・爆発リスクの低減が期待されています。

「熱暴走」とは、電池内部で何らかの理由で発生した熱によって化学反応が加速し、さらに熱を生み出す悪循環に陥る現象です。温度上昇が制御できなくなると、発煙や発火、破裂爆発につながることがあります。
CIO SMARTCOBY Pro SLIM SSの特徴
今回購入した『CIO SMARTCOBY Pro SLIM SS』は、半固体電池を採用したモバイルバッテリーで、国内メーカー「CIO」が手掛けています(→公式WEB)。
『CIO SMARTCOBY Pro SLIM SS』は、実用性とバランスを重視した設計が特徴です。
サイズは、98.3×66.8mmと非常にコンパクトで携帯性に優れています。厚みは16mmと若干ありますが、ポケットやカバン内にも十分収まります。重量は187gで、iPhone 17(177g)とほぼ同等です。
サイズ・重量面の持ち運びやすさと、35W出力の充電性能の両立が意識されています。
充電機能に関しては、PD(PPS)対応で35Wでの高速充電が可能です。出力はUSB-A×1、USB-C×2の合計3ポートで、3台のデバイスを同時に充電可能です。
安全性についても半固体電池を採用することで一定の熱安定性を確保しつつ、過度に技術面を前面に出すのではなく、「安心して日常使いできる完成品」としての方向性が強い製品といえます。

CIO SMARTCOBY Pro SLIM SSのサイズ感はこんな感じです。横幅はiPhone 16より一回り小さめ、縦幅はiPhone 16の65%ほどです。



半固体電池をことさら意識することなく、通常のモバイルバッテリーとしての使い勝手の良さを意識した製品と言えます。半固体の安全性が目立たず背景にあり、その上でモバイルバッテリーとしての使いやすいさを両立した製品です。
HAMAKEN WORKS HW-SSPB050の特徴
筆者は、半固体電池採用のモバイルバッテリーをもう1つ所有しています。
『HAMAKEN WORKS HW-SSPB050』(5,000mAh)です。このバッテリーは「半固体電池ってどんな感じなんだろう?」という興味から購入したのですが、常にウエストバッグに常備して持ち歩くことを想定していたので「5,000mAh」モデルをチョイスしました。
HAMAKEN WORKSのモバイルバッテリーは、半固体電池という技術そのものを前面に押し出した設計思想が特徴です。特に、電解質構造や安全性に関する技術的な説明が明確で、「なぜ安全性が高いのか」をユーザーに伝える姿勢が強く見られます(→公式WEB)。
そのため、単なるモバイルバッテリーというよりも、「安全性設計を含めた技術製品」としての側面が強く、技術志向のユーザーとの相性が良い製品かと思います。使用感や携帯性といった日常的な使い勝手よりも、構造的な安全性や技術的裏付けに重点が置かれている点が特徴と言えます。
CIOとHAMAKEN WORKSの違い

| CIO | HAMAKEN WORKS | |
| 品名(型番) | SMARTCOBY Pro SLIM SS | HW-SSPB100 |
| バッテリー種類 | 半固体系電池 | 準固体電池 |
| 容量 | 10,000mAh | 10,000mAh |
| 最大出力 | 35W | 22.5W |
| 最大入力 | 35W | 18W |
| 急速充電規格 | PD3.0、PPS | PD3.0、PPS |
| USB-Cポート | 2ポート | 1ポート |
| USB-Aポート | 1ポート | なし |
| 同時充電 | 最大3台 | 最大1台 |
| パススルー充電 | 対応 | 対応 |
| 本体充電時間 | 約90分 | 非公表 |
| サイズ | 約98.3×66.8×16mm | 112×68×17mm |
| 重量 | 約187g | 約195g |
| サイクル寿命 | 非公表 | 2,000回(容量80%維持) |
| 動作温度 | 非公表 | -20~80℃ |
| 液体含有率 | 非公表 | 3% |
| 参考価格 | 6,280円 | 8,980円 |
※HAMAKEN WORKSは10,000mAhモデルで比較しています。
CIOは「半固体電池」、HAMAKEN WORKSは「準固体電池」としていますが、現時点では「半固体電池」と「準固体電池」に明確な業界標準の区別はなく、ほぼ同じものを指していると考えてよいと思います。
こうして一覧表にすると、メーカーによる違いが見えてきます。
【CIO】
- 最大35W出力
- USB-C×2+USB-A×1
- 最大3台同時充電
- 価格が約1,700円安い
- 若干、軽量・コンパクト
【HAMAKEN WORKS】
- 液体含有率3%を明示
- サイクル寿命2,000回を公表
- 動作温度範囲を公表
- 準固体電池の安全性を積極的に訴求
筆者が感じたのは、CIOは半固体電池採用で安全性を担保しつつも、一般的なモバイルバッテリーの性能・機能などでユーザーに選ばれる製品作りを目指している印象を受けました。HAMAKEN WORKSは、逆にモバイルバッテリーとしての基本的な性能や機能を有しつつ、準固体電池の安全性や耐久性を前面に打ち出している印象です。
発熱・充電速度・携帯性の実用比較
実使用において重要になるのが、発熱、充電速度、携帯性といった日常性能です。
発熱については、どちらも半固体電池採用により従来のリチウムイオンバッテリーより安定性が高く、極端な発熱は抑えられています。実際に使うとHAMAKEN WORKSの方はほんのり温かくなり、CIOはあまり温かくはなりません。
充電速度に関しては、PD対応や出力設計により差が出るポイントであり、使用機器との組み合わせによって体感差が変わりますが、普段行っているiPhoneへの充電では、出力が35%増しのCIOの方が早く充電完了に至っている印象です(常に監視しているわけではないのであくまで感覚です)。
携帯性については、CIOは日常持ち歩きを意識したバランス設計、HAMAKEN WORKSは構造重視のためやや設計思想の違いが反映される傾向があります。実際の重量は、CIOの方が軽量ですが、小さくコンパクトなため、手のひらに集中して重みを感じるため若干重さを感じることがあります。大きな面で分散されるHAMAKEN WORKSは、実際の重量より軽く感じることがあります。
筆者の感じた違いと利用シーンと使い分け

どちらも半固体・準固体電池を採用しているので、従来の三元系リチウムイオン電池採用のモバイルバッテリーより、発火・発煙・爆発のリスクが軽減されている点で差はないと考えます。
その上でどちらがおすすめか…と考えると、どんば場面で何を求めるのかで選択肢は違ってくるように思います。
実際に筆者が日々の生活の中で使ってみた印象では、USB-Cポートが2口あり、最大35Wでの高速充電、放電後の再充電の速さなど、実用面での使い勝手の良さで、CIOが使い勝手の良さで少しだけおすすめ度が高いかな…という感じです。
一方でHAMAKEN WORKSの方は、動作温度-20-80℃や、サイクル寿命を公表しています。
そのことを踏まえて考えると、あくまで筆者の感覚ですが、例えば筆者のように仕事柄、車内での利用が多い場合、万が一、車内に置き忘れることを考えると、80℃まで動作温度を公表しているHAMAKEN WORKSの方がより安心感があります。
※ただし車内に放置を推奨しているわけではありませんし、車内に置き忘れても大丈夫と保証しているわけでもありませんので念のため。
また、災害時の非常持ち出し袋(鞄)に入れてあるモバイルバッテリー(今は国内メーカーの三元系リチウムイオン電池)の買い替えを検討していますが、長期保管ということを考えると、やはりHAMAKEN WORKSかな…と思います。


CIOとHAMAKEN WORKSのサイズを並べて比較してみました。HAMAKENは5,000mAhモデルですが縦×横は10,000mAhモデルも同じなので、5,000/10,000mAhいずれでもこんなサイズの違いになります。
厚みに関しては、やはり5,000mAhの方がかなり薄型で、携帯性には優れる感じです。スマホへの補充電が1回で済む場合には、携帯性優先で5,000mAhを選んでもいいかと思います。
ちなみに、充電・放電を兼ねるポートは、CIOが3口なのに対してHAMAKEN WORKSはUSB-C×1となっています。
また、筆者の場合、CIOは10,000mAh、HAMAKEN WORKSは5,000mAhであることが使い分けにも影響しています。
常にウエストバッグに入れていて、仕事を含め単独行動の場合に持ち歩いているのはHAMAKEN WORKSです。厚みが薄いというのが最大の理由ですが、バッグに常時入れておくことは場合によっては炎天下の車内などに置かれるケースもあり得るので、そういう場面での信頼性を勘案してのことです。
CIOは、普段は主に自宅内で使用していて、家中どこでも好きな場所で(コンセントがない場所でも)充電できるような使い方をしています。また、家内と出かける際にはCIOを持って出かけます。10,000mAhないと、iPhone2台を充電できないためです。

最後に1点付け加えるとすれば、今回比較している2つのメーカーはいずれも国内メーカーであるということ。安心感ももちろんですけど、何かあった際の対応や保証のことを考えても国内メーカーであることは無視できない要素だと筆者は考えています。
その他の電池を採用したおすすめモバイルバッテリー
モバイルバッテリーの安全性向上を目指した技術は、半固体電池(準固体電池)だけではありません。
近年は、発熱や発火リスクの低減、長寿命化を目的として、さまざまな次世代バッテリーが実用化されています。
ここでは、半固体電池以外で注目されている代表的なバッテリー技術を紹介します。
リン酸鉄リチウムイオン電池(LiFePO4)
リン酸鉄リチウムイオン電池は、電気自動車やポータブル電源などにも採用されている安全性の高いリチウムイオン電池です。一般的な三元系リチウムイオン電池と比べて熱安定性に優れ、高温環境でも発火しにくいことが特徴です。
【メリット】
- 発熱・発火リスクが低い
- サイクル寿命が長い
- 高温環境に比較的強い
- 長期保管に向いている
- レアアースを使わない
【デメリット】
- 同容量なら重くなりやすい
- エネルギー密度が低い
- 小型モバイルバッテリーでは採用例が少ない
ナトリウムイオン電池
ナトリウムイオン電池は、リチウムの代わりにナトリウムを利用する新しい電池技術です。レアメタルへの依存度が低く、資源面での優位性が注目されています。また、低温環境に強いことも特徴です。
【メリット】
- 資源(ナトリウム)が豊富で安価
- 低温性能に優れる
- 安全性向上が期待されている
- 将来的な価格低下が期待できる
【デメリット】
- エネルギー密度が低い
- 製品数がまだ少ない
- 実績が少ない
CIO vs HAMAKEN WORKS半固体電池モバイルバッテリー比較 まとめ
モバイルバッテリーは、これまでの「容量が多くて安ければ良い」という時代から、安全性や信頼性も重視される時代へと変わりつつあると実感しています。
その中で注目されているのが、発熱や発火リスクの低減が期待される半固体電池(準固体電池)モバイルバッテリーです。
今回比較したCIOとHAMAKEN WORKSは、いずれも国内メーカーであり、半固体電池を採用、安全性向上を目指している点では共通しています。しかし、その訴求方法や製品づくりの方向性には違いが見られました。
CIOは安全性を確保しながらも、35W出力やUSB-C×2ポート、約90分での本体充電など、日常での使いやすさや利便性を重視した製品です。一方のHAMAKEN WORKSは、準固体電池の構造や液体含有率3%、動作温度-20~80℃といった技術的な特徴を積極的に公開し、安全性への取り組みを分かりやすく伝えています。
安全性を担保しつつ使い勝手の良さに秀でているCIOか、「ちょっとやばい」と感じるような環境下でも安心感のあるHAMAKEN WORKSか、どちらが優れているというよりも、「使い勝手を重視するか」「技術的な安心感を重視するか」の違いと言えるでしょう。
半固体電池モバイルバッテリーが身近な価格帯で購入できるようになった今、これからモバイルバッテリーを選ぶなら、安全性にも目を向けるべきではないでしょうか。









