今回は、モバイル通信を2回線保有する、いわゆる「デュアルSIM」の重要性についてです。
少し前になりますがau回線で発生した大規模な通信障害で、電話も通信もできなくなって困ったことがありました。その際に、2系統の通信回線網の必要性を痛感した次第です。
その際に筆者はPovo1回線の契約だったために、au通信網以外の通信手段がなく、通信障害を回避する方法がなくお手あげでした。
そんな経験を経て、現在は「LINEMO」と「楽天モバイル」の2回線を契約しています。
通信障害時に備えておくべき
今回はauの通信障害でしたが、ドコモやSoftbank、楽天モバイルで起きない保証はありませんし、あれほど大規模でないにせよ、実は通信障害は「工事」「メンテナンス」なども含めると意外に多く発生しています。
また、台風や地震などの大規模災害で基地局にダメージが生じた場合、各キャリアによって通信不能エリアが異なり、ある地域ではドコモは使えるがauは使えない、また別の地域ではauとSoftbankは使えるがドコモは使えないといった状況に陥る可能性があります。
MVNOが提供するいわゆる格安SIMも、元をただせばドコモ・au・Softbank・楽天モバイルの4キャリアのいずれかの回線です。
大元の通信網を持つauが障害に陥れば、auのサブブランドであるUQmobile、格安プランであるPovo2.0は言うに及ばず、au回線を使うMVNOはことごとくその影響を受けます。
NTTドコモに障害が発生すれば、ahamoやirumoに加えて多くのMVNOサービスが使えなくなり、Softbankで発生すればY!mobileやLINEMO、MVNOが利用不可となります。
1回線にすべてを委ねるような回線契約では、何らかの障害が発生した際に、通話や通信を確保することが難しくなるため、「通信安全保障」の面から2回線契約(デュアルSIM)体制が重要です。
では、2系統の通信回線をスマホで準備しておくために何が必要なのでしょうか。
2系統のSIMが使えるデュアルSIM対応スマホ
2系統以上の通信網で通信可能にするには、いわゆるデュアルSIM(2系統のSIMで通信可能にする機能)に対応した端末(スマホ)が必要です。
デュアルSIM対応機でない場合には、端末自体を2台用意すれば2回線を利用することは可能です。しかし、外出時に常に2台のスマホを持ち歩くのは場合によっては難しい、あるいは面倒、重いといったことになるかもしれません。
ここ最近発売されたスマホならほとんどが何らかのデュアルSIM仕様になっていますが、一口にデュアルSIM機能といっても、いくつか種類があります。
DSSS(デュアルSIM・シングルスタンバイ)
「DSSS」とは、端末に2系統の通信をセットすることは可能(デュアルSIM)ですが、通話・通信の待ち受けは片方の通信でのみ可能(シングルスタンバイ)なタイプです。
例えばドコモのSIMと、auのSIMをセットしておくことはできるが、メールの受信などの『待ち受け』はどちらか片方のみ可能で、手動で切り替えないと、もう片方のデータ受信ができないタイプです。
ちなみにSIMの種類は、SIMカード(物理SIM)・eSIMいずれかは問いません。SIMカード2枚でも、SIMカードとeSIM各1系統でもデュアルSIMです。
DSDS(デュアルSIM・デュアルスタンバイ)
「DSDS」では、セットした2系統の通信いずれでも同時に待ち受けが可能(デュアルスタンバイ)なタイプで、通信を手動で切り替える必要がありません。
ただし、2系統とも4GB通信での待ち受けはできず、片方は3G通信となってしまうため、現実的には片方で通話(3G)、片方でデータ通信(4G)という使い方になります。
通話に使うSIMとデータ通信に使うSIMを分けられるのがメリットとなります。
データ通信を担当させるSIMは、音声通話機能がなくても大丈夫なので、割安なデータ通信専用SIMを利用できます。
DSDV(デュアルSIM・デュアルVoLTE)
「DSDN」は、2系統の通信をセットすることができ、そのいずれも4G通信が可能なタイプで、通信を手動で切り替える必要がありません。
DSDSでは片方が3Gでしか通信できませんでしたが、DSDVでは音質の良い4G回線による通話(VoLTE)にも対牛ており、2系統両方で4G通信が可能です。
現在はNTTドコモ・au・Softbank・楽天モバイルの4キャリア全てが「4G通話(VoLTE)」を提供しているので、利用可能な端末であればそのまま音質良好な4G通話が可能です。
DSDA(デュアルSIM・デュアルアクティブ)
「DEDA」は、DSDVがさらに進化したもので、セットした2系統の回線の片方で通話中に、もう一方の通信回線を使ったデータ通信が可能で、通信を手動で切り替える必要がありません。
例えば、通話中に地図アプリを開いて場所を確認したり、メールで画像を送信するなどが可能になります。
これら4種類のデュアルSIMを一覧にまとめるとこうなります。
同時待受 | 同時通信 | 手動切替 | 通話中通信 | |
DSSS | × | × | 要 | × |
DSDS | 〇 3G+4G | × | 不要 | × |
DSDV | 〇 4G+4G | × | 不要 | × |
DSDA | 〇 4G+4G | 〇 | 不要 | 〇 |
実際の利用を考えると、DSSSはすでに採用端末も少ないですし使い勝手もあまり良くありません。DSDSは最低限のデュアルSIM仕様ですが、通話が3Gでしかできないのは音質の点でもう一息です。
DSDVであれば、通話・通信いずれも4G通信が可能なので実用上問題ないでしょう。DSDAはあれば便利ですが、採用している端末がまだ少なく高額な傾向ですので、実用性ではDSDVが上でしょう。
ちなみにiPhoneでは、2018年発売の「iPhone Xs」以降がデュアルSIM対応となっており、一貫してSIMカード(物理SIM)×1と、eSIMの組み合わせです。eSIMに設定数の制限はなく、何系統でも通信を設定しておくことができます(実際に利用できるのは1系統)。
複数回線を契約する
デュアルSIMを利用するには、2系統の通信回線を契約する必要があります。
2系統のSIMを契約する…と言っても、その目的や用途で選ぶべき通信は異なります。
通話や通信に最適な通信を選択する
例えば、通話料が割安な通信会社で音声通話機能付きのSIMを選び、データ通信には通信品質が良く、通信速度が速く割安な別会社のSIMを選び、1つの端末に設定して、通話とデータ通信を別々の通信(SIM)で使い分けるような使い方です。
仕事用とプライベート用の番号を使い分ける
会社から端末が貸与されず、個人のスマホの料金を負担してくれる…等の仕組みの場合、2系統の通信契約を結ぶことで、仕事用とプライベート用を完全に分離することが可能です。
仕事用に契約した通信を一切プライベート用に使用しなければ、その通信の請求はすべて仕事用として会社に請求することができますし、休日には仕事用の通信をOFFにして仕事の連絡をシャットアウトすることも可能です。
通信障害対策として2系統の通信を持つ
先日のauの通信障害で懲りて、「やっぱり2回線持ってないとイザという時にヤバいな」と感じた方も少なくなかったと思います。
通信障害が2社に跨って発生するような状況(大規模災害など)では、それはもう個人のレベルで対応できることではないので、この場合は除外して考える必要があります(もちろん、大災害時でも基地局の被害状況などによって通信可能・不可能な通信網が分かれる場合もありますが)。
先日のauのようなメンテナンスや故障などによる通信障害は、複数の通信会社に跨って発生することはないので、複数回線を契約しておくことで障害を回避して、通話・通信を確保することができます。
通話に関してはIP電話も要検討
通信障害を想定した場合、電話については、モバイル通信とは全く別の通話方法として「IP電話」も検討しておくとベターです。
「IP電話」は、データ通信(インターネット回線)を利用して通話が可能な電話で、通常時には音質が悪い、緊急通報ができないなどであまり通話の中心的メソッドにはなりにくいですが、モバイル通信が甚大な被害を被って通話不可となった場合に役立つ可能性があります。
WiFiの電波をとらえることができれば、「IP電話」は通話することができますので、緊急時の通話の方法として頭に入れておくとよいかもしれません。
※通話アプリやIP電話については別記事に詳しいのでご参照ください。
ちなみに、楽天モバイルは通常の音声通話回線のほかに、通信回線を利用して通話やSNS機能を利用可能な「Rakuten Link」サービスを提供しています(無料で話し放題・通話不可の局番あり)。楽天モバイルなら、1回線でも2種類の通話機能を使い分けることが可能です。
デュアルSIMおすすめの組み合わせ
「できるだけ月額基本料金が安い組み合わせ」という前提で、いくつかのパターンを組み合わせてみました。
筆者実践中イチオシ:LINEMO+楽天モバイル
LINEMOはSoftbank回線で、楽天モバイルは楽天モバイル回線で、異なる通信会社の通信網を利用可能な組み合わせで、2024年11月現在、筆者はこの組み合わせで2回線利用しています。
筆者のデータ通信量は、4~5GB/月なので「LINEMO3GB+楽天モバイル3GB」あれば十分であり、その場合の月額料金は『990円+1,078円=2,068円』で、1GBあたり344.7円になります。
街中では通信可能エリアはほとんど違いませんが、ビルや地下などで楽天モバイルが若干電波が弱くなる場合がありますが、逆に楽天モバイルしか入らない場所もあります。郊外ではほとんど差を感じたことはありません。
2回線を使い分けられる以外のLINEMO+楽天モバイルのメリットは
- キャリア品質の通信網を使える
- LINE利用時の通信料無料(LINEMO)
- 段階制料金(LINEMO・楽天モバイル)
- 楽天市場SPU4倍(楽天モバイル)
- Rakuten Link無料通話かけ放題(楽天モバイル)
- 最大3,278円でデータ通信無制限(楽天モバイル)
LINEMOが2段階制に移行して、3GB(990円)と10GB(2,090円)を自動切換えで利用できるようになりましたが、あえて3GB以上は使わずに、楽天モバイルで3GBを使って合計6GBで収めています。
LINEMOは3GB超えたら上限10GBで2,090円、楽天モバイルは3GB超えたら20GBまで2,178円、無制限でも3,278円といずれも選択肢としては、3GB超になったら自動的に上位容量に移行できるので、6GBで足りない月でも心配不要…という点もメリットと言えるかもしれません。
では、逆にデメリットは…というと
- 料金が若干割高
というぐらいで、あまりデメリットは見当たりません。
料金が割高という点についても、キャリア回線「直」なので、昼どき等の混雑時の速度低下がなく常に高速通信が利用できる点を、自分的には高く評価しているので、安いからとMVNOを使う気にはなれません。そういった意味では他社と比べると割高に見えるが、自分的には納得していると言えます。
実は、6月まではPovo2.0+楽天モバイルで2回線運用していたのですが、ギガ活の制度が変更となってPovoを月間実質無料で使えなくなったので、7月からPovo→LINEMOに移行して5か月目になります。特に不満はなく快適に利用できていて、現時点での筆者の「イチオシ」の組み合わせです。
筆者的に何げにいちばん気に入っているのは、Rakuten Linkで無料通話かけ放題なんです。どうにも通話に料金が発生するのが嫌なので、通話先の制限はありますが無料通話ができるのはかなりいい気分です^^
月額209円超低コスト:Povo2.0+b-mobile
『最小コスト』ということで組み合わせてみたのが「Povo(au)」+「190 Pad SIM」(b-mobile)です。この組み合わせの最小月額コストは209円(税込)です。
まず『Povo2.0』ですが基本料金がかからずに約半年間(180日)回線を維持できる(※)ため、月額基本料がかからないという大きな特徴を持っています(通信はトッピングを別途購入)。
一方の『190 Pad SIM』は、月間100MBまで190円(税込209円)で維持できて、最大15GBまで使った分だけ料金を支払う従量制課金制を採用しています。回線はドコモとSoftbankを選べます。
この2回線の組み合わせは、通話や通信をほとんどしない方向けです。
通信をする際には、Povoで用途に合ったトッピングを購入するか、190 Pad SIMで100MBを超えて利用すると消費データ量に合わせて自動的に課金されることになります。
Povoには「データ使い放題24時間(330円)」といった他社にはない容量の買い方もできるので、自分のライフスタイルに合わせて自由にカスタマイズできる点がメリットです。
このパターンの場合、通話機能があるのはPovoだけです(190Pad SIMはデータ通信専用SIM)。通話は受話(電話を受ける)がほとんど…という場合にはかなりおすすめの組み合わせです。
無料で使える「IP電話」がなくなった
auの通信障害では、実は自分は早い段階でデータ通信は可能でした。
障害についての報告の中でもあったように、なぜかiPhoneはアンテナは立たないのですが、使ってみると普通に使えたんです。
しかし、冒頭の通り困ったのは電話でした。
通話アプリ「G-Call」を使って電話をかけようとしたのですが、大元のauが通話できないので「G-Call」では通話できません。
通信会社の通話回線が使用できなくなった際に、これまでであれば、データ通信回線を使って音声通話が可能な「IP電話」サービスがあり、そのいくつかは基本料金無料(通話料のみ)で使えたのですが、LINEやSmarTalkなどがサービス終了になり、無料で利用できるIP電話がなくなってしまいました。
そのため、シングルSIMの状態で通話回線に障害が生じた場合、通話する方法がまったくない…ということになってしまいます。有料のIP電話サービスはいくつか残っていますが、毎月基本料金を払い続けることにはどうしても抵抗があります。
そうなると、やはり、低コストのデュアルSIM(2回線契約)が必要なのかな…と思う次第です。
筆者は通信品質や速度の問題からMVNOを使う意味はあまりない…と思っていますが、MVNOも含めて割安に2回線を維持・運用できるのであれば、ぜひ2回線運用をおすすめします。
※通常時の通話料節約に「G-Call」がおすすめです。詳細はこちら。
デュアルSIM2系統通信 まとめ
今回は、「2系統の通信手段」(デュアルSIM)の必要性について考えてみました。
筆者のパターン「LINEMO+楽天モバイル」は、『どうせ3GB超で2000円払うなら、2回線で同等金額なら納得して維持できる、さらに付帯メリットがあればモアベター』という考えに基づいています。
通信障害は規模の差こそあれ、常に様々な場所で発生しています。大規模な全国的な通信障害は滅多に起きるものではないかもしれませんが、いざ起こった場合の影響やデメリットは計り知れません。
それぞれの都合や好みでかまわないので、ぜひデュアルSIMを検討してみては如何でしょう。
それでは今日はこの辺で。